【2026年9月11日(金) 月例会レポート】豪華2本立て開催!「捨てる勇気を持て」「10円から世界へ 跡継ぎが超えた3つの突破口」

9月 月例会レポート

静岡イノベーションベース(SIB)が主催する2026年9月の月例会では、有限会社石川商店/ISHIKAWA-LABOの石川英章氏、株式会社常陸風月堂の藤田浩一氏を講師にお迎えしました。

ともに老舗企業の3代目として家業を受け継ぎながら、既存の常識にとらわれず事業を変革してきたお二人。石川氏からは「捨てる勇気」をテーマにした事業変革について、藤田氏からは家業の危機感を起点に高付加価値化・海外展開へ挑戦してきた経験について、それぞれお話しいただきました。

講師紹介

石川英章 氏

静岡県三島市でレディースセレクトショップ「ISHIKAWA-LABO」を経営。家業の3代目として事業を承継し、「装いを通じてライフスタイルを豊かにする」を掲げながら、顧客層や事業のあり方を見直し、地域発のアパレル事業を成長させています。

▼公式サイト
https://ishikawa-labo.com/

藤田浩一 氏

株式会社常陸風月堂 代表取締役社長。
茨城県日立市の老舗和菓子店「常陸風月堂」の3代目。製菓学校・修行を経て家業に入り、2020年に代表取締役へ就任しました。
「笑顔の連鎖と循環」を理念に、栗蒸し羊羹「万羊羹」の開発をはじめ、クラウドファンディングや海外への挑戦、世界的なパッケージデザイン賞「Pentawards」での受賞など、地方の老舗和菓子店から新たな市場を切り拓いています。

▼公式サイト
https://www.kasho-fugetsu.net


石川英章氏「捨てる勇気を持て」

古い業界を変革できた理由

石川氏の原点にあったのは、「かっこいいビジネスをしたい」というシンプルな思いでした。

地元のお客様から「欲しいものは東京まで買いに行く」という声を聞き、地域にニーズがありながら、それを満たす店が十分にないことに着目。一方で、アパレル業界には在庫リスクをはじめとする独特の商習慣があり、従来と同じ方法を続けるだけでは成長が難しいという課題もありました。

そこで石川氏は、家業を継ぐ前から三島エリアの競合店を顧客目線で調査。丸井での販売・バイヤー・生産管理・現場マネジメントなどの経験や、経営戦略の学びも活かしながら、「市場を徹底的に知る」「自分たちの強みを把握する」「勝てる場所で戦う」
という考え方を事業変革の土台にしていきました。

事業を大きく飛躍させる「ジャンプ」はどこから生まれるのか

石川氏が事業を大きく成長させる中で変わったものの一つが、目標の置き方でした。当初の「地域でしっかり経営する」という目標から、「全国で、自分のジャンルの一番を目指す」という、より大きな目標へ。

「自分が生きた証として、何かを残したい」という思いも、その背景にあったといいます。現在の延長線上だけで目標を考えるのではなく、まず高い目標を掲げる。そうすることで、必要となる準備や行動、出会う人までも変わっていくという考え方です。

変革には「捨てる勇気」が必要

石川氏が特に強調したのが、今回の講演テーマでもある「捨てる勇気」です。事業を変革する過程では、これまで積み重ねてきたものをすべて残したまま、新しいことを始められるとは限りません。限られた経営資源の中で、「自分たちは誰を幸せにしたいのか」を考え、そのために何を続け、何をやめるのかを決めることも経営者の重要な仕事です。

また石川氏は、自分自身の基準を上げるために、積極的に人に会い、経営者コミュニティなどを通じて学ぶことも大切にしています。「誰に会うのか」「どのような環境に身を置くのか」によって、自分の視野や目標そのものも変わっていく。学んで終わるのではなく、実際の行動に落とし込むことの重要性についても語られました。

そして社内でも伝えているというのが、「オオカミ少年になれ」という言葉。実現できるか分からないほど大きな目標でも、まず言葉にして宣言する。高い目標を掲げることで、そこに向かうための準備や行動の質が変わっていくという、石川氏らしいメッセージが印象的でした。

藤田浩一氏「10円から世界へ 跡継ぎが超えた3つの突破口」

危機感から始まった事業改革

続いて登壇したのは、株式会社常陸風月堂の藤田浩一氏。

藤田氏の事業改革の出発点にあったのは、家業の将来に対する強い危機感でした。伝統や手仕事を大切にしながらも、事業として持続していくためには、売上と利益を確保していかなければならない。
そこで藤田氏が考えたのが、
手仕事の価値を守る
→ 商品の価値を高める
→ 高付加価値化する
という方向性でした。

小さく試し、売れた事実を次の挑戦につなげる

藤田氏の挑戦は、最初から完成されたものではありません。まず商品を市場に出してみる。お客様の反応を見る。手応えがあれば、さらに商品や価格を磨いていく。そうした小さな検証を繰り返しながら、現在の代表商品へとつなげていきました。

大切なのは、最初から完璧な答えを求めるのではなく、仮説を立て、小さく試し、結果を見ながら次へ進むこと。成功体験を少しずつ積み重ねることが、より大きな挑戦への自信にもつながっていったといいます。

事業承継では、自ら責任を持って決める場面も必要

家業を受け継ぐ中では、先代の考え方や、これまで守られてきた伝統との向き合い方も大きなテーマになります。すべてについて完全な理解や合意を得てから進められるとは限りません。

藤田氏からは、「後継者自身が責任を持ち、決断しなければならない場面もある」というお話もありました。先代が築いてきたものを尊重しながら、自分の代でどのような未来をつくるのか。事業承継における、覚悟と意思決定の重要性が語られました。

「適正価格」ではなく「価値に対する価格」を考える

藤田氏の話の中で、もう一つ印象的だったのが価格の考え方です。「この業界の商品なら、このくらいの価格」という既存の相場だけを基準にするのではなく、「提供している価値に対して、どのような価格をつけるのか」を考える。

商品そのものだけでなく、素材や製法、背景にあるストーリー、ブランド体験なども含めて価値を伝えることで、価格の可能性も変わっていきます。価格競争から抜け出すためには、単に価格を上げるのではなく、「なぜその価格なのか」を説明できる価値をつくること。これは和菓子業界に限らず、多くの事業に共通する視点でした。

恐怖をなくすのではなく、怖くなる前に行動する

藤田氏が大切にしている考え方の一つが、「怖くなる前に行動する」ことです。海外展示会への挑戦も、最初から十分な準備や環境が整っていたわけではありません。まず「行きたい」と周囲に発信したことで協力者が現れ、実際の挑戦へとつながっていったといいます。

準備が完璧になるまで待つのではなく、まず行く。行った先で学ぶそこで得たものを次に活かす。失敗を必要以上に恐れず、行動を止めないことが、新しい機会につながっていきます。また藤田氏は、自分が実現したい未来を具体的に思い描くことや、自分が何に恐怖を感じ、何にワクワクしているのかを言語化することも習慣にしているとのこと。

未来を具体的に描き、自分自身の感情を理解することで、次の行動につなげています。

パネルディスカッションから見えた共通点

講演後は、SIB代表理事・富田氏がファシリテーターを務め、石川氏・藤田氏とのパネルディスカッションを行いました。

アパレルと和菓子。業界も事業承継の背景も異なるお二人ですが、話を掘り下げていく中で、いくつもの共通点が見えてきました。

市場を知る。小さく試す。
常識にとらわれず踏み込む。
捨てるべきものを決断する。
怖くても行動する。人に会う。
高い目標を掲げる。

そして何より、「何のために事業をするのか」を、自分自身に問い続けていること。

事業を大きく飛躍させる「ジャンプ」は、ある日突然起こるものではなく、日々の小さな行動と意思決定の積み重ねによって生まれる。お二人の経験から、そんな共通点が浮かび上がるパネルディスカッションとなりました。

まとめ

今回のお二人に共通していたのは、業界の常識にとらわれず、自ら考え、まず行動する姿勢でした。石川氏は、徹底した市場理解と高い目標設定、そして「何をやめるのか」を決めることで事業を変革。藤田氏は、家業への危機感を原動力に、伝統を守りながら高付加価値化や新しい市場への挑戦を続けています。

そして、お二人の話を通じて見えてきたのが、
「捨てる勇気」
「挑戦する勇気」
「人とのつながり」
の重要性です。

現状の延長線上だけで考えるのではなく、自分が目指す未来を描き、そのために必要な一歩を踏み出し続ける。経営者としての意思決定や行動について、改めて考える機会となる月例会となりました。

次回予告:11月13日(金)

開催場所:デロイトトーマツ(静岡市葵タワー17F )
講演者:

詳しくはこちらのページからご確認ください。
SIBhttps://sib.xibase.jp/2026/07/14/20260807monthlyinformation/

一緒に、裸の経営に向き合いませんか?

もしあなたが、

・経営にどこかモヤモヤを感じている
・ひとりで意思決定し続けることに、少し疲れてきた
・経営者として、人として、もう一段成長したい

そんな想いを持っているなら、SIBのフォーラムはきっと意味のある場所になります。

経営は孤独なもの。
でも、本音で向き合える仲間がいれば、乗り越えられる壁があります。
静岡イノベーションベースで、
あなたの「これから」を一緒に考えてみませんか?

ご興味のある方はこちらをご覧ください。
https://sib.xibase.jp/content/#partner